海外アニメの書き散らし

ネタバレ注意!!

だいたい『モアナ』みたいなもん~『クボ 二本の弦の秘密』見てきたよ

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(字幕版)

 

お久しぶりです。また映画館で作画アニメを見てきてしまいました。

また殴り書きです。文章書かないから、どんどん書く能力が落ちている気がします(;・∀・) というわけでライカの新作『クボ』を見てきました。

 

 

 

 

見終わった後の第一印象は「これってモアナじゃん!」でした(笑)

作画(コマ撮りアニメなので人形とかセットの細かさですが)のすごさや、非欧米圏を舞台背景にしているところ、神話的な物語といった要素がよく似ています。 さて上映決定前は大変楽しみにしていた作品だったのですが、いざ見てみると意外とハマれず…。楽しみにしていた作画の面も思ったほどおおーっとなることもなく(感想を読み返したらモアナのほうがずっと楽しんでるな自分)。 #一生のお願いだからクボを見て なんてタグもありあまり水を差したくないのでここでこっそり言わせてもらおうかなと思います。


あらすじ:日本を舞台に、三味線で折り紙を操る少年が伝説の三つの武具を探して母親の実家と戦います

 

作画はまあさすがのすごさといったところ。 特に序盤のクボが三味線で折り紙を操って弾き語りをするくだりの、人形たちによるアクションは最高。
“瞬きするなら いまのうちだ”のセリフも相まってめっちゃかっこいいシーンです。 折り紙でできた侍が一枚の紙になって、また元の姿に戻るところがお気に入りです。平面と立体が自在に変化する様子がとっても面白い。


段ボール?のサメを輪切りにするシーンとか、いかにもストップモーションって感じでよい。 クボが洞穴から出て町へ降りていくシーンがあるのですが、岩山をアップでとっているときはミニチュアっぽいのに、どんどんカメラが引いていくと実寸のように見えてくるのが面白い。なぜでしょうか。

敵である闇の姉妹(母上の妹?)が登場するシーン、ライカの別作品である『コララインとボタンの魔女』でボタンの魔女が登場するシーン以来のゾワゾワ。灯篭流しの明かりがさーっと消えて行って、闇の中から姉妹がフワーっと…。 姉妹とサルの戦闘シーンも激しくてなかなかの出来。

クワガタの眼が、工芸品っぽいっていうか漆細工ぽいていうのかわからないんですけど…黒目のふちが筆の主線で、虹彩に当たる部分が銀色になってて、これがなんか妙に日本っぽくてよかったですね。


ただ手放しで絶賛できるかというと…?
意外とキャラクターの動きの部分に地味さを感じました。 例えばでっかい骸骨と戦うシーンがあるのですが、その骸骨の動きが思ったよりも小さい。地下の洞穴みたいな場所だったのでスペースの狭さがあるせいかも知れないんですが、基本的な動作が腕を上げたり下げたりのみのように思えました。もっとこう腕をぶんぶん振り回したり、壁にぶつかったり、操り人形みたいにガクガク動いたりしたら面白かったんですけれど。

巨大な目玉のバケモノみたいなのも出てくるんですが、基本見つめてくるだけ(←失礼)であまり動き自体はなし。真実を見せてくるという設定だったのですが普通のオーバーラップといった感じでそこまで凝った映像表現とは思えませんでした。海の中の様子を再現するっていうのを何か大変な技術でやってるのかもしれませんが…。

月の帝(母上の父親・ラスボス)の変身したムカデ状の怪物も確か3Dプリンターで作ったと聞いた気がするんですが、技術のすごさより動きのなさに地味めな印象を受けました。魚みたいにゆらゆら泳いでるだけのような…。 海のシーンも全部セットで作っててすごいという話を聞いていました。公式サイトによると

水の動きは、メタルの棒に取り付けられた布や、小さく千切った紙、壊れたガラスのパネルなどを利用し、気が遠くなるような試行錯誤の末、リアルな海の質感を作り出した。

そうですが、実際見てみると思ったよりすごさがわかりづらい。綺麗すぎて全然ガラスとか布っぽさがないんですよね(見ていて気が付きませんでした)。CGと言われてもわからないかもしれません。 技術が極まって画面がきれいになりすぎたというか…。確かにきれいだし技術はすごいけど、CGで作られた綺麗さと差別化できているかと言われると、個人的には若干微妙です。

CGアニメにおける実写風の表現技術がどんどん進化していって、実写とCGの境目がだんだんわからなくなっていくような時に、「コマ撮りアニメーションらしさ」を出していくのってめっちゃ難しいのでは…?といったことを考えてしまいました。 前にアードマン(『ひつじのショーン』とかを作っているアニメ会社。こちらもほぼストップモーション専門)が『ウォレスとグルミット』の映画を作ったときに「技術が向上しすぎて手作り感が薄れたので、わざと粘土の表面に指紋を残したりした」と監督が言ってた気がするんですが、ライカもそろそろ技術の単純なクオリティだけじゃない作画を模索し始める時期に達しつつある気がします。

また正直、人形や化物たちを構成する樹脂やプラスチックという素材の質感はかなりCGと競合してしまうように思えるんですよね。『トイストーリー3』とか『レゴ・ムービー』とか見てもらうとわかると思うんですけど、CGはかなりプラスチックの質感を再現するのが上手です(『レゴ・ムービー』なんて最初見たときコマ撮りだと思いましたもん…)。

この映画でも、いかにもプラスチックめいた月の帝最終形態よりも、意外とシンプルな段ボールっぽいサメとかのほうが面白く思えました。

 

自分が予告を見たときに一番楽しみにしてたのって、折り紙の人形たちが動き回るシーンだったんですよね。

(まあそらこれもCGで表現できるって言われたら身も蓋もないんですけど) いかにもきれいで壮大な海とか大きな怪物とかよりむしろ、折り紙の平面から立体へ、3次元から2次元へ自在に変化するイリュージョン性を、実際の紙でやってしまうといったほうに力を入れて見せてほしかったですね。紙のアナログな質感も、反デジタルな人たちにウケそうですし。

この折り紙が出てくるのはほぼ映画の前半までで、後半はだいたいアクションシーンやCGのエフェクトばかりっていうのがちょっと残念でした。 クボ自身の戦闘も割と地味でしたね。繰り返しになりますがもっとたくさん折り紙パワーを見たかった。終盤はほとんど三味線をかき鳴らしてバリアとか光のエフェクトとかが出てるだけみたいな感じだったので。前半に出した鳥の大群とかなんだったんや…後半にもう一回出すとか、戦闘シーンにとっとくとかすればいいのに。

あと作画というより演出の問題かもしれませんが、サルとクワガタがけんかしてる間にクボが船を作り上げるシーン、けんかしてる二人より船が出来ていくほうを見せてほしかった。まあフレーム外ですごい変化が!っていうギャグなのかもしれませんが、このけんかのシーン自体あまり面白みのあるものではなかったのでフリとして少々退屈に思えました。

 

話のほうはいかにもメルヒェン(昔話)ですね。神話的というか。三回の繰り返しとか出てくるし(『コラライン』もそうだったな)。正統派ファンタジーって感じです。

で自分はこういう神話的というか昔話そのまんまみたいな話が苦手なのもあってあまり乗り切れず。作画アニメだとはわかってたんでそこまで話のクオリティは期待してなかったんですけどね。

意外と物語のベースは「かぐや姫」っぽいです。 母上がかぐや姫の役回りで、月の世界に帰るのではなく父上と駆け落ちする。そして実家から逃亡した母上を、人間らしさや感情を否定する月の帝(そのまんまですね)と闇の姉妹の一家が追ってくる。そしてクボが母上父上の力を借りつつ最終的に一家を撃退する、というのがこの映画の基本的な構図です。

何もせず帰るだけのジブリの『かぐや姫の物語』に比べればまあまともな再解釈になっていると思います。 <辛さも幸福も何も感じない冷たい存在として生き続けるよりは、幸せも辛さもある生を生きるほうがいい>とか、<人は死んでも思い出として生き続ける>とかが主題になっていて、そのメッセージの良さはもちろん分かります。ですが、演出・セリフ等だいぶベタだなという印象を受けました(再現できるほどこまごまと覚えてないのですが最後の月の帝の煽りセリフとか)。

クボ自身の成長が思ったより感じられなかったのもちょっと残念。 物語の盛り上がるポイントで基本助けられてばっかりのような気がしました。闇の姉妹と戦ってるのもほとんど母上やサルばかりだし。 最後も結局両親のパワーに助けられたというか。いや助けられるのは全然いいんですけど、クボ自身の見せ場の少なさも相まってちょっとバランスの悪さがある気がします。両親バリア強すぎですし…。 あと実質お父さんの役立たずっぷりがなんとも言えない(笑)

最後月の帝が普通のおじいさんに戻ってしまうあたりでちょっとびっくり。月の帝はクボの祖父で両親の仇なわけですが、両親抜きでクボとこれからうまくやっていけるのか、村でちゃんと生活していけるのかすごく心配になりました。

というか月の帝一家、もっとファンタジー的な存在だと思ってたのですが。一種の神様とか精霊的な。そういうもんだと思って、この一家の背景(普段どういう生活してるのかとか)について書き込みが薄いことに納得していたのに、急にリアルな人間に戻って村の生活と接続されてしまったので違和感が発生してしまいました。 人間が天の世界に攻めてこないように武具を守ってどうたらこうたらみたいなこと言ってた気がするんですが…?でも元は普通の人間だったってこと…?それとも人間にひきずり降ろされたみたいな…?帝がいなくなっても平気なの天界は…?うろ覚えなのも相まって謎のてんこ盛りです。

普通に月の帝も改心して帰りましたとか倒されて成仏しましたみたいなファンタジックなオチで良かったと思うんですけどね。なぜ急に普通のおじいさんに戻したし。

クボの隻眼は思ったほどストーリーの重要キーポイントではないというかさほど変化しないんだなと思いました。一応月の帝が両目を奪おうとしてくるという設定だったのですが、ラストもそこまで目玉よこせ感はなかったし。かといって最後に片目が戻るわけでもなく。ちょっとコスプレっぽいかも。

 

最初の村のシーンに出てきたおばあちゃんは、ライカっぽくかつ日本っぽくもありとってもかわいくてよかったです。

 


 

思ってたよりもマイナスな感想ばかり書いてしまいました。期待してた分やはりどこかハードルが上がっていたのかもしれませんね。 まあ私以外の人が『クボ』を誉めまくってくれるだろうからまあいいか(いいのか?)